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10月, 2021の投稿を表示しています

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  夢のはなし。悪い人たちにつかまった。一緒にいた仲間の一人がまだ研究段階だというが仮死状態になるキャンディーをくれたので口に含む。隙を見て山へ逃げ込み、人家を見つけたところでいつのまにか小動物に変身していた。隠れるのに良さそうな物置部屋がある。さあ、丸まって眠ろう。

21

  夢のはなし。どこかの旅行の帰りだった。高台にある駅にたどり着いたら、視界いっぱいに巨大な白い彫像が二体そそり立っており、特大の丸い目に見つめられた。反対側には巨大な白い聖母マリア像が両手を合わせている。ふとどこからか白いボールが福音のように飛んできて、思わずよけた。

20

   夢のはなし。とある公園。池のほとりを歩いていると、突然巨大なロブスターが水中から現れた。けれど、あれよあれよという間に寄ってたかって人々に退治される。

19

  夢のはなし。男の人が中国の美しい歌を歌っていた。琴線に触れて涙が出そうになるのをこらえていると、誰かが「カササギだ」と言う声がして、人々はみな立ち上がり空を見上げた。空一面に鳥の群れが飛んでゆく。鳥たちに交じってチャリオットを駆る古代人たちが飛んでゆく。歌のように。

18

  夢のはなし。運河に飛び込んで、人魚のように深く潜って泳いでゆく。水底には二枚貝が散らばっていた。中には真珠がひそんでいるのだ。それを大切に思い、岸辺にいる人のためにいくつか拾ってはまた河岸に置いた。岸辺の人が誰なのかは知らなくても。

17

  夢のはなし。冬枯れた道を「まだ春には早いね」と言いながら、仲間と歩いていた。花が咲いていたらどんなにかいいのに。そうして広場に足を踏み入れると、一本の木が桃色の花をあふれるばかりに咲かせていて、目を奪われる。春だ!みんなの心にも春が広がってゆく。

16

  夢のはなし。ある店で一通の手紙を買う。誰かが(女性だと思われる)書いた告白めいた手紙だ。高額に驚いたら、そういうものだと店主が云う。バスを待つあいだ、開封して少し目を通してみた。何枚にも書き込まれたそれには、私の記憶と交錯するものがあった。一体誰?やがてバスが来た。

15

  夢のはなし。アナベルという少女と友達になった。彼女の生い立ちは複雑で、いつも彼女は孤独だった。別れ際、永遠に見失いそうだったから、こう囁いた。「いつまでもあなたを待っている。だから私を憶えていて。私はすぐに忘れてしまうから、あなたが私を見つけて」と。

14

  夢のはなし。花火をしていた。何の花だったか、きれいに咲いた鉢植えの花の上で、手花火をする。火花が散り、しばらくすると鉢植えに火が燃え移り、花は燃え上がった。それは文字通りの花火だった。

13

  夢のはなし。恋人と手をつないで河岸を歩く。「ロシアの川は初めてよ」そう囁くと、ロシア人の彼は静かに微笑んだ。遠くに聖堂の青い丸屋根が見えていた。この風景ははじめから知っている。いいえ、ここは日本だったはずなのに。

12

  夢のはなし。どこかの講堂。書き物をしようと机に座ると、書類の下に指輪を見つけた。彫り物のある幅広の銀の指輪だ。左指にはめると、少し大きい気がしたが、私にそれは収まった。待っていたように。

11

  夢のはなし。電車に乗って廃墟を見にゆく。陸橋の上で見下ろしたその一角には、手前に窓の破れたアパートがあり、誰もいない廃屋の塊の向こうに、沈黙して寺院が鎮座していた。時の壊死をこぞって人は見にゆくのだった。

10

  夢のはなし。列車に乗っていた。車窓を見上げると、夜空に木の生えた小さな浮島があり光をこぼす。浮島は次々と出現する。まるで打ち上げ花火のように。世界の終わりの夢を、以前に見た事があったと思い出した。

9

  夢のはなし。一度きり、逢った人に絵葉書をしたためていた。どこかで見た外国の街並みの写真。結びの言葉は「愛をこめて」。サインしたのは古い名前だった。

8

  夢のはなし。氷上に穴が開いていて、静かに落ちて沈んでいった。湖はどこまでも透明で、底には赤い花びらに似た生き物がいる。手のひらに乗せて、そっと飛ばした。私はわたしを浮上させるように。

7

  夢のはなし。とてもきれいなサンダルを履いて出かける。なめらかな赤地に、ブルーやグリーンの入った不思議な色合い。それはまるで私の一部のようにぴったりと合った。

6

  夢のはなし。何らかの理由で地域の住人は少しずつ粛清されている。ある日、一人の老人が奇跡的に生き返ったとの報せ。私は嬉しくて泣きながら歩き出す。いつしか人々の行進になっていった。

5

  夢のはなし。仲間と夜道を歩いている。なだらかな高台の道。ふと左手に入り江が見えた。青い光に照らされて、静かに波がうねっていた。まぼろしのように、そこに行きたいと思った。

4

  夢のはなし。恋人は美容師だ。自分の店を開くという。髪を切ったばかりだったけれど、彼の最初の客になった。やさしく髪を切られるという快楽を知る。

3

  夢のはなし。雪が降り積もっている。吹き溜まりをかきわけると、花があった。輝くばかりの白いカーネーション。生き返ったようだった。花言葉「私の愛は生きています」。

2

  夢のはなし。忘れ物に気づいて、さっきまで食事をしていた店に戻る。店員に断り、階段を駆け上った。テーブルの下を探すことしばらく、それは見つかった。ロザリオだ。忘れたのはこれだったんだと思った。

1

夢のはなし。眠っている私の左手を子犬が咬もうとしている。戯れだと知っているから、そのままじっとしていた。子犬はやさしく歯を当てた。